「ねえ!ハートの女王の所に私も行くの?」


私は王子の後を追いかけながら尋ねる。


「当たり前だろ。お前は俺の世話係なんだから、俺から離れんな。」


正確にはキス係ですけどね!


王子の背中にベーっと舌を向ける。


「てかお前、機嫌…」そう言いかけて私の方にくるりと振り返るが、


私が舌を出しているのをみて言葉を飲み込んだ。


なんだか呆れたような顔をしている。


何?機嫌?…あ、怒ってたんだった!


自分が怒っていた事を思い出したが、何かもうどうでもよくなっていた。


「俺、今から昼寝するから。3時になったら起こせ。」


え、コイツまた寝るの!?


「3時って言われても、このお城ちゃんとした時計ないじゃない。」


そうなのだ。


昨日から時計を探しているが、どの時計を見ても反対回りで針がぐるぐると回っている時計ばかり。


「はぁ?何言ってんのか分かんねえけど…3時になったら勝手に腕引っぱるから。俺の近くにいろよ?」


そう言って、王子は私のおデコにキスをした。


「な、何するの!急に!」


私はおデコに手を当てて問いかける。


「だってなんか寂しそうな顔してたから。一緒に寝るか?」


いつもの意地悪な笑顔でそう言ってくる。


不覚にもそれをカッコいいと思ってしまう。


私、どこかおかしいんだろうか…


「寝るわけないし!一人で寂しく寝てれば!この俺様意地悪変態王子!!!」


私はカッコいいと思った事を悟られたくなくて、吐きセリフを残して走り去って行った。


「何だよ、俺様意地悪変態王子って…」


王子はそんな私の背中を困ったように見つめているのだった。