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「なあ、まだ怒ってんの?」
「当たり前でしょ!誰のせいで怒られたと思ってるのよ!」
「キスしてやるから許せよ。」
「まだ寝ぼけてるわけ!?」
「………」
今は王子のお仕事の時間。
仕事部屋らしき部屋に連れて来られて、私は王子の見張り役をしていた。
でも王子はものすごいスピードで仕事を終わらせ、暇そうだ。
私はいつまたあんな事をされるか分からないので、王子から1番離れた所に立っている。
「もう何もしねーから。こっちこいよ。」
そう言った王子の顔が何だか寂しそうだったので、
私は渋々近くに行った。
「ねえ、このお城って王子だけなの?お母さんとかお父さんとか…」
「親父はいるよ。母さんはいないけど。」
お母さんいないんだ…
私が「ごめん」と謝ると、「なんで謝るんだよ。」と笑った。
「お前も親父いねーんだろ?だったら同じじゃん。」
え?確かにお父さんはいないけど…
私、王子にそんな事話したっけ?
そう聞き返そうと思ったが、王子はもうこの話に興味はないらしく、ペンをクルクル回して遊んでいた。
マイペースだな…この俺様ドS変態王子。
「あれぇ、新しいメイドちゃんがいるぅー。」
「ひゃっ!?」
突然、後ろから女の人の声がする。
振り返ると、扉の所にピンクの様な紫の様な髪の色をした…すごくキレイな女の人がいた。
「……"チェシャ"。勝手に城に入るなと言ってるだろ。」
チェシャと呼ばれたその人は王子を見ると、オモチャを見つけた子供の様にニコぉーっと笑った。
…ん?この人すごいキレイだけど…
よく見ると猫の耳としっぽみたいなのが生えてる!
チェシャさんはそんな事を考えてアタフタしてる私には見向きもせず、
すーっと王子に近付き、勢いよく抱きついた。
「久しぶりぃ!白雪王子♡」
その光景に、何故かチクリと胸が傷む。
「気持ち悪い。離れろ。」
王子はすごく嫌そうな顔をしている。
「相変わらずつれないなぁ。ボクが抱きつけば男なんてイチコロなのにぃ。」
「俺をその辺の男と一緒にするな」と王子は言って、チェシャさんを引き剥がした。
そして、彼女はようやく私を見た。
「可愛い子猫ちゃん〜!お名前はぁ?」
その言葉に王子が「猫はお前だろ。」と言う。
やっぱり猫なんだ…
「私は亜利…「そいつはキャサリンだ。昨日付けで俺の世話係になった。」
キャサリン!?
私いつキャサリンになったの!?
そう思って王子を見ると、「黙ってろ」と言う目をしている。
「ふぅーん、キャサリンねぇ?白雪にはラビーがいるでしょおー?」
「ラビーは執事だ。」
…執事とお世話係って何が違うんだろう。
「まあ、なんでもいいけどぉー。またお目覚めのキスしてほしかったら呼んでねぇー。」
え、“また”…?
「お前だけは絶対にイヤだ。」
「ふふ。あ、あとはコレ貰ってくからぁ。じゃあまたねぇー。」
チェシャさんはそう言って、どこから出したのか、
銀の剣を持ってスー…っと消えて行った。
「あ…あいつ!待て!」
珍しく王子が焦っている。

