「ワシは白雪王子専属の執事、ラビーじゃ。用がある時は呼ぶといい。小娘の用なんぞ聞きたくないがな!」


ここは大広間。


最初に王子が舞踏会を開いていると言っていたあの部屋だ。


「うん、分かった。ラビちゃん。」


王子の「そう言えばお前、名前は?」と言うひとことから自己紹介が始まった。


「な、ラビちゃん!?ワシはラビーだ!!!」


だって、私にはおじいちゃん執事には見えないんだもん。


ラビちゃんはプリプリと怒っていたけれど、そんな姿も可愛かった。


王子は動物に囲まれながら私達のやりとりに笑っている。


さっきいた客室から出た途端、また動物達がダダダダダーッと走って来て、あっと言う間に囲まれたのだ。


悔しいけど、動物に囲まれているのがすごく絵になる。


こうやって見ると、やっぱり王子様なのだと実感させられるな。


次に、王子を囲んでいる動物の1匹が口を開いた。


「私達は特に役割はございません。皆、森でケガや迷子になっていた所を助けて頂いたのです。」


コイツに?と思ったけれど、私を実際に追い出さなかった所も見ると、本当は結構いいやつなのかもしれない。


じっと王子を見ていたら、パチッと目が合ってしまった。


そらすにもそらせず、一応いつもの作り笑顔で返してみる。


すると口パクで「バーカ」と返して来た。


前言撤回。やっぱり嫌な奴。


「名前のない私達に、名前も付けてくださったのです。」


その言葉に、他の動物が次々に「僕マックス!」「私はバンビ!」と言った。


「そっか、皆は王子が大好きなのね。」


私がそう言うと、皆は嬉しそうに声を揃えて返事をした。


「で、お前は?まだ名前聞いてないんだけど。」


今さらだけど、王子も皆も、よく名前も知らない私を受け入れてくれたな。


そう思うと、少し涙が出そうになった。


「えっと、森 亜利子って言います。今日からお世話に…」


「「「アリス…!?」」」


私が名前を言うと、皆がざわついた。


王子も驚いたように目を見開いている。


「何か珍しい名前なの?」


そう聞くと王子は「いや…」と言いながらラビちゃんに何か指示を出していた。


ラビちゃんは戻って来ると、今度は巻物の様なものを持っていた。


それを床に広げ、一心不乱に読んで何かを探している。


「なあに、これ?」


「これは大おばば様の巻物じゃ。」


「大おばば様?」


「俺のひいひいおばあ様だよ。会ったことはないけどな。」


壁に寄りかかっている王子がそう話す。


「大おばば様は占い師だったのじゃ。おばば様の予言はハズレた事がなかった…あった!これですぞ、王子!」


ラビちゃんは長い長い巻物の最後の方を指差して王子を呼んだ。


「ああ、やっぱりアリスだ…」


その王子の呟きに、私も2人の元へ行く。


相変わらず文字は反対に書かれていた。