いつもの場所

16. 『彼女』


電話の向こうはすこぶる機嫌の悪い女の声だった。



『もしもーし?誰?』



「あ、あの…」



と、どもる絵里だったが隣に座っていたネムが口パクで「頑張れ」といったので、姿勢を正して強気の顔になった。



「裕也くんに用があるんだけど、あなたどちら様?」



『裕也?裕也なら横で寝てますが。着信がうるさすぎるんだよ。』



それは絶対に嘘だと分かった。月曜日の今日は必ずと言って良いほど『マルマン』へ行っていたからだ。月曜日はよく出るらしい。それも月初めの月曜なんていったらお気に入りの台がさらに熱い!と、毎度耳にタコなほど言っていたし、なんていったって毎回ついていった絵里にはそこら辺の女子よりパチンコに…いや『マルマン』に詳しい。



「分かってるわよ、今マルマンにいるのよね。どれだけ一緒にいると思っているのよ、バカにしないで欲しいわ。」



あまりに正々堂々と戦う姿勢を見せた絵里に周囲は緊張感が張りつめた。



『何よ偉そうに、未練たらしい元カノね。』



「元カノ?誰よそれ。私、別れ話なんてした記憶ないですけど。あなたこそ勝手に人の携帯でるなんて彼女ヅラしてるの?」



電話の向こうの声がなんとなく漏れてはいたが、その言葉で車内の3人は、裕也に新しい女ができて絵里が用無しになったことを確信した。