いつもの場所

裕也はばつの悪そうな顔で「ちげーよ」と言いうやいなや運転席のドアを閉めた。



少しあいた窓から「幸子って誰よ」という女の声がしたのが聞こえたが、それを遮るように「かおり、送っていくわ」と裕也がエンジンをかけた。



勢いよく駐車場をでていく裕也の車は、後ろのバンパーで絵里の自転車を倒した。



幸い自転車は無傷だったが、それを起こして股がるまでにどれ程の時間がかかったのだろうか。



とにかく何も考えられないまま帰宅した。分かったことといえば白いワンピースの女性は幸子ではないこととその女性と裕也は手を繋ぐ仲ということくらいだった。



自宅には幸い家族も出ていったあとで誰もいなかった。彼女は授業にもいかず、母がいつも見ている夕方の番組が始まるまで呆然としていた。



裕也からの連絡もない。平日なのに仕事にいったのかもわからない。結局渡せなかったお弁当の中身を、母に悟られないように袋にくるんで捨てた。梅干しだけは一口つまんでみた。



酸っぱさで我に返ったようにここ最近の自分を思い返した。



バチが当たったんだ。親や友達のいうことも聞かなかった。嘘もついた。自分の未来だからと諦めた公認会計士の資格、税理士の資格こそ受かったものの学費を払う親に対して何の敬意もなかったこと。朱美は誰にも言わないでくれているだろうが、実は先月お金を借りたこと。だがこの時も斎藤との事は天罰のうちに入らなかった。



そして絵里は携帯を手に取った。