いつもの場所

10. 裕也の彼女



絵里は裕也と合流し、助手席に座りながらもネムや朱美、凛々子に言われたことを思い出していた。



斎藤の存在は絵里にとって『アイドル』のようなものだった。そのせいか、今でも体の関係を続けている事の罪悪感など一ミリもなかった。しかしそれを友達に話したことで少し客観視できたことも事実だった。




しかし斎藤との関係を切る事は少しも考えられなかった。夜中にふと連絡が来て斎藤が車でが迎えに来る。小一時間で事が済み、帰宅する。自分でも無償のデリヘルのような扱いをされていることも自覚していた。それでも大切な人に頼られているということが誇りでもあった。




斎藤は彼女の心のバロメーターのような存在。その関係は二人だけの秘密という点が斎藤への気持ちを持続させる要因でもあった。それとは逆に公開している彼氏として、愛を表現しあえる本当の初めての恋人『裕也』もかけがえのない存在であることも間違いなかった。




「あ、やっべ。ガソリンねえわ。あ~しかも財布家に忘れてきちゃったよ。絵里悪いけど…」




「いつも迎えに来てくれてるから当然ガソリン代くらい出すわ。」



と裕也がすべてを言い終える前に絵里はこういって笑顔を見せた。