いつもの場所

「要するに、裕也くんは私が処女だと思って付き合ったみたい。『ガッカリした』ってはっきりいわれたよ。」



ネムに続き朱美と凛々子も深くため息をついた。それなりに恋愛も経験してきた彼女達には『そんな男』について語るのも馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに無表情のままそれぞれの飲み物に口をつけた。



「そんなこといわれても怒りもせずに悩むってことは、絵里…あんたそうとう裕也が好きなんだね。逆に羨ましいわ~。まぁ斎藤のことも好きなんだろうけど。」



その凛々子の言葉に朱美も続いた。



「恋愛ってそうゆうもん?私は反対だな。自分を大切にしてもらえない人と一緒にいても楽しいのかな…わかんないな。」



その数年後に朱美自身もダメ男に惹かれるなんてこの時は微塵も思っていなかっただろう。



ふと絵里の携帯がなった。絵里は誰に了解を得るわけでもなく急いで通話ボタンを押した。



その仕草に皆、相手が裕也だと確信した。



電話を切ると絵里は開口一番謝った。



「私のために集まってくれたのにごめん。今から裕也くんに会いたいって言われたから…行ってくる!!怒らせたと思ってたけど…なんか普通だったから…会いたいなって私も思って。」



「まぁ頑張って。気を付けてね。」



そして小走りで店を後にする彼女を見送る3人だったが、その後の会話も絵里の事で持ちきりだった。