「ノエラは見つかったか?」
 暗い部屋の奥の上座。その部屋の主は言った。
 部屋の主とともに円卓を囲んでいた者たちは一様に身を固くした。
 彼らはなかなか口を開かなかったが、やがて部屋の主と長い付き合いの者が答えた。
「…いいえ。まだでございます」
 部屋の主はゆっくりとその唇に笑みを乗せた。美しすぎて恐怖を覚えるほどの凄みだった。
「…そうか。まだか。ここまで探してなお見つからないとはな。……まあいい。ノエラが動く前に計画を完遂すればいいだけの事」
 部屋の中の空気が動いた。
「それでは……」
誰かが発した問いに応えるように部屋の主は再び微笑した。
「妖精界を手中に収める」