「ちょっと!まだ凛ちゃんをとめられてないの!?」
「馬鹿野郎!今とめたところなんだよ!凛、手を離せ!」
「手?」
「お前がつかんでる馬鹿から、さっさと離せ!!」
「僕がつかんでる・・・・馬鹿?」
言われて、視線を動かす。
何かを持っている。
私は何かを掴んでいる。
何かを・・・・
「なにこれ?」
手から伝わる生ぬるい感触。
マネキン?
頭から赤いペンキを被った人形?
「なんで僕、こんなマネキン持ってるの?」
「っ――――――――人間だ、馬鹿野郎!!」
耳元で怒鳴られ、それが瑞希お兄ちゃんの声だと思った時には、彼の肩に担がれていた。
「くそっ!のぞきもしてみるもんだぜ!高千穂、行くぞ!」
「けっ!凛のことしゃべったら、とどめ刺しに行くからな!ミミズ野郎!!」
瑞希お兄ちゃんに担がれた状態で見たカンナさんは、コンクリートの地面に崩れ落ちた人形に中指を立てながら怒鳴っていた。
乱暴にドアが開く音。
続けざまに階段を駆け下りる足音と、荒い呼吸が耳に届く。
目に映るすべてが、スローモーションに見える。
「こっちよ、みーちゃん!」
その声に合わせて体が瑞希お兄ちゃんから離れる。
モニカちゃんの真っ赤なオープンカーに、投げ込まれる。
そんな私の隣に、瑞希お兄ちゃんが乗り込む。
そして、着ていた上着を私の体にかける。
隠すようにかぶせると、私のお尻を、腰回りを触り始める。
「あった!」
そう言って私の単車のキーを手にする瑞希お兄ちゃん。
それを車から少し離れた場所にいる人に投げた。
「高千穂、頼んだぞ!」
「任せて下さい!先輩らこそ、検問にはご注意を!」
キーをキャッチしながらカンナさんが言えば、運転席のモニカちゃんが笑う。


