「久しぶりだね、涼子ちゃん!」
「う、うん・・・凛道君も・・・」
「『凛道君』?」
違和感のある呼び方。
気づいてすぐに訂正を求めた。
「涼子ちゃん、僕のことは『凛』でいいよ?凛道君って呼ぶのは長いし、面倒くさいでしょう?」
「め、めんどうくさい!?凛君って、本当に変わっ・・・あ!」
「どうしたの?」
「な、なんでもないです。」
「え?なんで、しゃべり方まで変わっちゃうの?」
普通にタメ口だったのが、敬語になってしまった。
「涼子ちゃん、普通に、前みたいに話してください。」
「でも・・・・」
視線を泳がせ、気まずそうにする涼子ちゃん。
それで嫌な予感がする。
「もしかして・・・・僕の悪い噂を聞いて、嫌になっちゃったんですか・・・?」
あり得そうな可能性を口にするが――――――
「違います!そんな噂に騙されません!」
「涼子ちゃん。」
きつく否定される。
ホッとしたけど、不安は消えない。
「よかった。それなら、動じて急に他人行儀になったんです?」
「あ、それは・・・」
口ごもった後で、おずおずと彼女は言う。
「・・・だって、私があなたを馴れ馴れしく呼ぶのは・・・よくないかと思って。」
(なにそれ??)
よくわからないけど、遠慮してるってこと?
(そんな心配しなくていいよ、涼子ちゃん!)
「そんなことないよ!涼子ちゃんに凛君って呼ばれない方が、僕の気持ちが良くないよ!」
(友達が減ったみたいでいや!!)
「だから!」
ガシッ!
「きゃっ!?」
彼女の両肩へ両手を置きながら真顔で伝えた。
「今まで通り、『凛君』って呼んでよ!僕本人が、良いって言ってるんだから。」
「でも・・・」
「僕は、涼子ちゃんに『凛君』って呼ばれるのが嬉しいんです。」
「凛君・・・」
「そうそう!それでなきゃ!よろしくね、涼子ちゃん?」
「・・・うん。ありがとう、凛君。」
呼び方が元に戻ったところで、ホッとする。


