彼は高嶺のヤンキー様3(元ヤン)





敵は、お金はもちろん、お金になりそうなものは全部出した。

免許証や学生証、マイナンバーも。




「あの・・・瑞希君・・・・?」

「瑞希お兄ちゃん、これは一体・・・?」

(どうする気だろう??)




そう思った私の疑問は、すぐに解決した。

戸惑うチーフさんと私・・・白神さんの方を見ながら瑞希お兄ちゃんは言った。



「白神さん・・・いや、シロ君。お店の責任者に電話して。」

「え?シロ君?」

「白神ちゃんのあだ名よぉ~イマドキ、心も綺麗な人なのよねぇ~」

「モニカちゃん・・・」



ニコニコしながら、私に解説してくれるモニカちゃん。

その横では、さらなる話が続く。




「電話するのは、シロ君じゃなくていい。そこの眼鏡の兄ちゃん。」

「ぼ、僕ですか?」




一番きつく、片淵セイヤをにらんでいた男性スタッフさんだった。



「そうだ。あんたが電話してくれ。話す内容は~『店でバカ騒ぎしたガキが、店の備品を壊して白神チーフに怪我させた。相手は反省して、ありがね全部出して警察だけは勘弁してくださいと謝ってきた。どうしましょうか?』ってとこか。」

「え!?瑞希君、それは~」

「『え!?』じゃねぇよ、シロ君・・・・この金で、シロ君の治療費、足ります?」

「え?ああ、多分・・・十分だと・・・・」

「そう言いきっちゃいけませんよ。医者に診てもらわないとわかりませんよ。で?壊された食器やインテリアの修理には足りますか?」

「ええ!?いや・・・これだと全然・・・」

「足りませんよね?本来ならば、警察ですが・・・相手は未成年。」




そうつぶやいた片足が、ダン!と強く床を叩く。




「『有り金と合わせて、身分証明書も差し出して誠意を見せたので・・・・親を呼びつけて示談にと思っていますが、いかがですか?』と言えば、後は上が良いようにしてくれるでしょう。」

「瑞希お兄ちゃん!?」

「瑞希君、それで警察を呼ばないと・・・!?」


そうだったんだ!


(瑞希お兄ちゃんが、身分証明書を・・・・身元がわかるものを出せって言ったのは!?)





彼の華麗なる差配(さはい)に、全員が感動する。

問題を起こした蛇の目でさえも。