「ブランド物の服やかばんはわかるけど、一番安い、見た目だけ可愛い指輪を褒められたことはないわ~・・・けっこう、女好き?」
(だれがだ、ドブス。)
私が好きなのは瑞希お兄ちゃんだけよっ!!
(てか、一番安かったの??それがどうして、女好きにつながるの!?)
気にはなったけど、それで話が盛り上がってしまったら困る。
言えない本心をふくめて疑問を飲み込んで、和やかな声で応対する。
「あははは!そんなんじゃないですよぉ~」
愛想よく、苦笑いを作りながら言った。
「人の口に入るものを取りあつかってるから、つい、人の手を見ちゃうんだ~♪一言多くてごめんね?でも、本当に似合ってるんだ。」
(って、いうことにしといてやるよ、ばーか!)
「安物って言ったよね?」
渕上を知る人間ならわかる、彼女が相手を脅す時の言い方。
でも、初対面のチョコちゃんは、そんなこと知らない。
無邪気を演じて、くすくす笑いながら言ってやった。
「え~?安いって、原料の話だよねー?可愛いに、高いも安いもないよ。だから、君もその指輪をつけてるんじゃないの?」
「なんだとてめぇ!?」
「黙って、アダム。」
「ルノア!?」
「ねぇ店員さん、なんでこの指輪を褒めたわけ?ブランド物とかわからない系?」
(しつこいな、こいつは・・・!)
「うん、ブランドとか、わからないよ。」
いい加減、面倒になったので、怒って帰るのも期待して言った。
「わからないけど、可愛いから可愛いといっちゃったんだ。値段も大事なのかもしれないけど、今日の服装に合うと思ったから選んだんでしょう?」
「そう思うの?」
「思ってる。君の指のネイル、全部の爪のデザインが違うけど、その指輪と『一番合ってるデザイン』が小指だと僕は思う。好きなんだね、そういうの?」
そう伝えたら、渕上は黙った。
こいつが、ネイルに命をかけていることは知ってる。
ネイルのことを言えば、少しは大人しくなると思った。
褒めてやれば、機嫌は悪くならないはず。
(そもそも私、ネイルとかよくわからないもん!)
ましてや、大嫌いな相手の指なんて、見てるだけでも気分が悪くなるわ!
(だいたい、あんたのどこが可愛いよ!?そう思えるわけないじゃない、ばかっ!!)
「ホント、上手に出来てて、可愛いねぇ~小指のデザインと一番似合ってるよ。」
ニコニコしながら嘘をつく。
相手の出方をうかがう。
これに渕上は意外な行動に出た。


