「なに言ってんだよ、ボケ店員。ルノアは、おすすめ聞いてんだろうが。」
「アダム。」
(飯塚アダム!?)
せっかく話がまとまったのに、いきなりいちゃもんをつけてきた。
「一番出てるじゃねぇだろう?ちゃんと接客しろよ・・・!」
渕上の男が文句を言ってきた。
おかげで、せっかくの笑顔が崩れそうになる。
(この野郎・・・ぶっ飛ばしてやろうかっ!?)
ムカつくお客はいるが、こいつが今夜の最高クラス。
(とはいえ、瑞希お兄ちゃんの顔に泥を塗るわけにはいかない!!)
「すみませーん、僕の言い方が悪かったですね?今夜は『カフェ・スラブ』が特に『美味しい』って買ってくれたお客様がおっしゃるので~販売前の試飲で僕も、同じように思ったので、勧めちゃいまして~」
「ああ?テメーの好みを俺の女に押し付けるのかよ!?」
「とんでもない!ただ、嫌いじゃなかったら、ハートのお姫様にも飲んでほしいなぁーて?」
「はあ?『ハート』だぁ~!?」
「もしかして、あたしのこと?」
ニラんでくる飯塚の隣で、渕上が聞いてくる。
しゃべりたくはなかったが、面倒な状況を終わらせるためにも、笑顔で答えてやった。
「はい♪小指につけてるハートの指輪、すごく似合ってますから。」
「指輪?」
小さくつぶやくと、再び口を開く渕上。
「・・・指輪だけ?」
「いいえ。全体的に可愛いけど、一番指輪が目立って見えましたから。素敵な引き立て役になってると思いまして♪」
「・・・ふーん。」
私の言葉に、考えるようなしぐさをする渕上。
「いい加減にしろよ、ぶりっ子!こいつ、俺の女んだぞ?それを指までジロジロ見ー」
「うるさいよ、アダム。」
「ルノア!?」
「うるさい。」
「っ・・・!」
その一言で、飯塚が黙った。
「ごめんね、焼きもち妬きでー?」
代わりに、渕上が口を開く。


