それちょうだいの一言も何もなしに私が持っていたメロンパンにかぶりついた。


視界にどんと入って来たのは匠の頭。


そして、図書室でも思ってたけど…近づくとわかるいい香り。


妙にドキドキしてしまう。



「もうー……。
てか、千紘と柳瀬くんがケンカなんて珍しいね」


「まぁ、相手も自分と同じ思考してるわけじゃねぇし、自分の思い通りにならない事もあんだなって思うわ。……特に最近な」




持っていた資料に視線を落としながら、そんな事を口にする匠。


え?って声を漏らせば、視線がぶつかる。




「この俺がおまえに振り回されるなんてありえねぇ」


「っ……!」




伸びて来た手が遠慮なしに頰をつねる。


痛いし。

やめてよ、と…手を払いのけたいのに。


放心状態の私はただその目を見つめることしかできない。