「匠くんと付き合ってるんだよね?」
「…今はもう付き合ってないよ」
というか、そもそも恋愛関係ではなかった。
私をミスコンに何としてでも出させるために、
王様の暇つぶしで遊ぶために、
彼女にしただけだった。
好かれて、選ばれた久河さんとは全く違うんだよ。
「ちょっと聞いちゃった! すごいよね、久河さん。あの王様から好きをもらえたんだもんね」
「王様……?」
「相当惚れ込んでるみたいだし……すごいなぁ」
あれ。
目が合ってたはずなんだけど…
だんだんとぼんやり一点を見つめる私と焦点が合わなくなる。
夏休み中に千紘と出かけた洋食屋でバッタリ匠と会ったあの日の事を思い出す。
帰り道、久河さんの話になったんだっけ。
感じたことのない、苦しさが胸をいっぱいにして、どうしようもないと立ち尽くしただけだった。
去っていく背中に行かないでと、しがみつく可愛さもない。



