「ほら、立って」と小さい子どもに向けるような優しい声が降ってくる。



腕を引き上げられ、千紘の力だけでは絶対に無理なので足に力を入れて腰を上げた。



目線が同じになってお互い自然と出てきた笑み。



……う〜


千紘の笑顔は安心するなぁ。




「喧嘩でもした?
さっき、匠くんに柚奈は?って聞いたら、あんなやつ知らねーって言って怖い顔してた」



「あー…あのね、千紘。
私と匠さっき別れたの。別れたって言うのもなんか変か……。もともと始まりは王様の暇つぶしだったもんね」




目を丸くする千紘。


でも次にはいつもの穏やかな表情に戻ってぽんぽんと私の頭を撫で始めた。



…柳瀬くんごめん。少しだけ千紘に甘えていい?



その華奢な腕にしがみついて、俯きながらぽつぽつと口から出るのはぜんぶ本音。




「好きになっちゃったんだよね……私。だからちゃんと意識してもらうためにも今の関係から離れなきゃと思って」