千紘オススメの場所は柳瀬くんの地元にある小さな洋食屋さんだった。


見た感じ個人経営のような。


「ココすごくおいしいの」と嬉しそうな千紘に腕を引かれて足を踏み入れる。



違うところに行ってもう少しおしゃべりしよ、って言ったのは私だけど……ココですか?




さっきオムライスにデザートまで食べたんだけどなぁ。大丈夫かな?


夕飯にはまだ時間早いんじゃあない?





「え、陸だ」


「あら」




千紘がお店に入るなり発した名前に私も小さく言葉を漏らす。


視線の先にはよく知った顔が……




「ちょっ、千紘待っ……」


「なぁに」




1日の中でこんなにあの男のことを考えた日なんてあったかと思ってしまうぐらい。


今日は匠のことばかり。



なかなか進もうとしない私は千紘に引っ張られて動いている。