「久河さん、おかえり!」



なかなか言葉の続きを発さない久河さんに声をかける。



「えっと……」と戸惑うその姿に座っている私は見上げたまま、頷いてゆっくり言葉の続きを待った。



目を泳がせていた久河さんとやっと視線が重なって、数秒後。



ほっとしたような感じに柔らかく微笑んでくた久河さんにドキリと胸が跳ねる。




「プリントを預かってきました。文化祭当日の注意点などが載ってます。皆さんよく目を通しておいてください…!」




教室全員とまではいかないけど、前方扉にいた人たちはしっかりと久河さんの声を聞いていた。




「了解。ありがとう、久河さん」


「はい…よろしくお願いします。鳴海さん」




渡されたプリントを受け取って、目を合わせるとさっきよりも近くで笑顔を見ることができた。