「王様の命令はなんだっけ?」



「っ……うるさいな近いな離れてってばー!」




肩を抱き寄せられて耳元で囁くように吐息混じりの声が鼓膜を刺激する。


ドキドキと胸が高鳴って顔真っ赤になっちゃって。


体は素直すぎるぐらい素直に反応するなんて、悔しすぎ。



なんでこんな状況になったかというと……


それでは少し前まで遡りましょう。




――30分前。



「ねえ、匠。ダンボールもっと集めなきゃじゃない?」


「匠くん、お菓子とか飲み物はどうする?」


「匠くん、これってさ〜!」



冷房がよく効いた教室の隅のほうで黙々と作業中。


飛び交う会話にだんだんと我慢ができなくなってきた。



……あぁ、もう。


匠匠匠って! みんなうるさいなぁ!


文化祭実行委員は匠だけじゃないでしょ。



もう1人、久河紗智(ひさかわ さち)って女の子もいること知ってるよね?