よしっ!


さっさと終わらせて着ぐるみから開放されよう。



よく前が見えない状態で、ほとんど感覚でがむしゃらに配っていった。



あ。私はいま猿なんだよね。


愛想よく、かわいらしく、手を振ったり体を揺らしたりしないといけないのか。



一息ついて、少ししたらやるか…




「見てー、あそこにお猿さんいるよ!」




どこかから近くでお母さんらしき声がした。




「風船もらって写真一緒に撮ってもらおっか」



「うんっ!」




声が近い!


元気のいいお返事をする少年に風船をあげなきゃ!




「……お猿さんどこ向いてんのー? 僕、こっちだよ!」



「!!」




あ、間違えたっ!


こ、こっちか!




「そっちも違うよ。どうしてくれないのー……? あ! もしかして遊ぼってこと!?」



「!?」