一度目は偶然聞こえてしまっただけだったけど。
二度目は完全に私に向けて言ったものだった。
ピクッとこめかみが動く。
白岡匠…
その容姿で今まできっと誰からも支持され続け、自分の思い通りにやりたい放題で事は進めて来たのかもしれない。
でも。
でもさあ…
「顔が良いからってなに言っても許される……なーんて、思ってないよね?」
勢いよく立ち上がった。
同時に振り上げた手からお財布がふっと離れていってしまって、
それはそのまま白岡くんの肩に命中してしまった。
少しずれていればもしかしたら顔に当たっていたかもしれない。
あっ、これはさすがにまずい。
やばい……!
自分の過失を認め、私は慌てて一歩近寄る。
「ごめんっ、今のは私が悪かったです」
「チッ……おい、暴力女」
「今のは、ほんっとに申し訳ございませんでした!!」