さよならはまたあとで


青々と輝く紫陽花の花弁や葉は、雨に濡れてきらきらと輝いていて、カエルの盛大な合唱さえも愛おしく感じられた。


「一人にしてごめん」


律太は突然そう切り出した。


「大変だったんだろ?」


あぁ、と私は苦笑いをする。


「葛城君から聞いたの?」


「そう。優恵ちゃんが困ってるって」


あのあと、葛城はずっとスマートフォンをいじっていた。
なるほど、葛城は私のことを気遣ってくれていたのだ。

「私、途中で採寸するのに抜けちゃったし、それに、律太君はすごいなぁって思った」

「俺は確かにすごいけど…急にどうしたの?」

律太は冗談ぽく笑う。

「いや、ただそう思っただけ」

「そっか」

さっきよりいっそう大きな声でカエルが鳴く。
いや、そう聞こえただけかもしれない。

いつもは律太と別れる場所である公園を横目に、私たちは歩き続けた。
律太の大きな一歩は、私の小さな一歩に合わせてくれる。
細かいところまで気を配るその律太の優しさが温かかった。