「俺はね…本当は渡井明良じゃないんだよ。
俺の本名は羽田日々。…俺の家は片親ですごく貧しくて…ある日、お母さんが知らない男の人と一緒に来て、「買い物に行ってくるから、いい子でお留守番しててね」って、そう言われて家に残されたんだ。
でも、それ以来お母さんが帰ってくることはなかったよ。
5歳の時だったかなぁ。
幼稚園の先生が無断で休む俺を不思議に思って、家まで見に来てくれたんだ。
なんかさ、途中から水も出ないし、電気も点かなくなるしで、冬で寒かったからもう半分餓死状態で先生に発見されたんだ。
それで、そのまま病院直行。
そのあとは児童養護施設行きだった。」
一気に話すと彼は私を見て少しはにかんだ。
「その頃かな、人のレッテルが見えるようになったのは。…最終的に俺はそこで働いていた今の母さんに引き取られて、名前も変えてもらった。
でも、やっぱりそのときのショックが大きくてさ、そんな俺を救ってくれたのが優恵だったんだよ。
人間不信になって怯える俺に、一生懸命話しかけてくれて、笑顔にしてくれた。
だから、優恵が事件に遭って、笑顔も元気も無くしちゃったとき、どうにかして助けてあげたいと思ったんだよ。
でも、そこに燈太が現れて、俺が心配する必要もないくらい、優恵は元気になった。
それなのにあいつ、死んじゃうから。
また1人になっていく優恵を助けたかったんだけど、結局無駄な足掻きに過ぎなかったんだよねぇ」

