さよならはまたあとで


「わぁっ!」


下を向いて泣く私の両肩を、誰かがポンッと叩いた。


見慣れない靴が見えた。

この時、律太だと期待していなかったといえば嘘になる。


恐る恐る顔を上げると、そこに居たのは…


「渡井君…」


彼は少し微笑んで、顔を上げた私と目があうと、急に感情の波が引いていったかのように、無表情になった。

それから、再び柔らかい表情を取り戻してから、

「どうしたの?」

と私の前にしゃがみ込む彼。


「こーんなに可愛い格好してぇ、彼氏とデートなの?」


何も言えずに下を向く私。


「だーれだろ、こんなに可愛い子を待たせる馬鹿は。」


明良は口の端をくいっと上げて、悪そうな顔をする。

ちょうど、もう何本目かも分からない電車が私たちの前に止まる。


「どーれ、さらっちゃおうかな」


明良は私の手を引いて立たせると、そのまま私を電車に引きずり込んだ。


「で、でも!」


「いーの」


「ねぇ!」


「いいから。大丈夫だから」


私の抵抗は虚しく、電車の扉は閉まった。