さよならはまたあとで



「優恵ちゃん」

燈太がいつもとなんら変わりない優しい声で私の名前を呼んだ。

「なに?」

私は顔を上げた。
上げることができた。

それはふわりと、自然に。

首を固定していたものが砂になって消えたようだった。

驚いた燈太の顔が目に映る。

二重の目、高い鼻、少し茶色がかった瞳、左目元にある泣きぼくろ。

初めて見る顔なのに、それは想像していた燈太の顔そのもので、私はなんだか嬉しくなった。

「やっと僕の顔見てくれた。」

彼は嬉しそうに鼻の頭を指で擦った。
笑うと細くなる目が本当に可愛かった。

「あのさ、僕」

彼は私のことをしっかり見て、それからはにかんだ。

「僕、優恵ちゃんのこと…好きだよ…結構前から」