「ごめんなさい…あなたは、誰ですか?」
私が言葉を絞り出すと、彼は少し悲しそうにくしゃりと顔を歪ませた。
「覚悟はしてたけどさー……やっぱりいざそれを聞くと落ち込むねぇ」
彼の息が私の鼻にかかる。
「俺は、渡井 明良(わたらい あきら)。
小学校のとき、よく遊んだんだよー」
眠たそうな二重の瞳がぼんやりと私を見つめる。
「あきちゃんって呼んでたよ、優恵。」
あきちゃん…
この時、私の中に埋もれていた彼の記憶がぼんやりと色を戻し始めた。
彼の少し低くて甘い声。
『優恵は弱いなぁ』
あの時思い出したあの言葉は、きっと…いや、絶対、明良の言葉だ。
「俺はずっと優恵の隣にいたんだよ。でも、優恵の視界に俺はいなかった。」
彼の顔が私から遠ざかる。
「だって、いつだって優恵の心の中は燈太でいっぱいだった…そうでしょう?」
明良はこてんと首を傾ける。
幼い顔立ちが、やけに大人っぽく見えた。
彼は私の頭をぽんぽんと叩くと静かにその場から去っていった。
「……まだ隣にいるからね」
彼が私の横を通り過ぎる時、彼が耳元でそう囁いた気がした。

