「あの…な、なんでしょうか?」
葛城が去ってから、私は恐る恐る声を振り絞る。
「あ、ごめんね、驚かせてるよね」
メガネの女性はメガネをかけ直すとにっこりと笑った。色素の薄い瞳がきらりと光る。
「私は恋川芸能事務所のマネージャー、新川 佳奈恵です。」
深くお辞儀をする新川さんに合わせて、私も慌てて鏡のようにお辞儀をする。
「あなたのステージ、ずっと見てたんです、私。……すごく感動しました。
堂々としてて、キラキラしてて…どうして今まで他の事務所が声をかけなかったのか不思議なくらいに。」
新川さんの目は光を失うことなく輝き続けている。
私はぼーっと話を聞くことしかできない。
「私が…その、いろいろあって、あまり外を出歩かないような…人だったので。」
「あぁ、知ってるわよ。勝手で悪いけれど、少し調べさせてもらったの。大変だったわね」
私は引きつった笑みを浮かべて小さく頷く。
「私の事務所は知ってるかしら。もし良かったら、私と一緒に仕事をしてみない?」
新川さんは黒い鞄の中から名刺を取り出すと、私に手渡した。
「返事はゆっくりでいいわ。お家の方とも相談して決めてね」
新川さんは再びお辞儀をすると、舞うようにしてその場を去っていった。

