さよならはまたあとで


「俺はね、好きな人の幸せを願っちゃうような人なんだ」


花壇の縁に腰掛けて、チョコバナナを頬張りながらにわかに葛城言い出した。


「小学校のときも、中学校のときも、好きな人の恋の応援ばっか。高校こそはって思ったけど、そう上手くはいかないもんだね」


彼は溜息を飲み込んだように見えた。

その代わりに自嘲気味な笑みを浮かべ、空を仰いだ。

まだ日は高かった。

青い空はどこまでも高く、白い雲はどこまでもこの空を泳いでいく。

私には葛城に言葉をかける権利もない。

あぁ、雲になりたい。
雲の上には何があるのだろう、
燈太もそこにいるのかな…

そんなことを思っていた時だった。


「…日高優恵さん…ですか?」


その声に振り返ると、一人の女性がこちらをそっと伺っていた。


「あ、邪魔しちゃってごめんなさいね、少し、話をしたいんだけれども…いいかしら」


黒縁の眼鏡をかけた長身の女性が言った最後の「いいかしら」は、明らかに葛城に向けられたものだった。


「あは、俺はただの友達っすよ!…優恵、話終わったらまた連絡して!」


葛城はそう笑いながら気を遣ってくれたのか、一人席を外していった。