「もしかして…聞いてた?」
葛城の顔が耳まで真っ赤に染まっていった。
「ごめん…」
私はちょっぴり俯向く。
はぁ、と葛城は溜息をつくと困った顔で笑った。
「さっきの、聞かなかったことにして」
「で、でも」
「律太、急用でちょっと外に出てるみたい。後夜祭には必ず帰ってくるって、言ってたよ」
彼は優しく微笑んだ。
「それまで、この惨めな俺と文化祭回ってくれませんか?」
渚とも七瀬とも離れてしまっている。
もともと律太と葛城と私の三人で回る予定だったから断る理由はない。
私は頷いた。
でも、あんなことを聞いてしまうと、やっぱり恥ずかしい。
だいたい普通に接すること自体に無理があるのだ。
再び七瀬が着付けてくれた浴衣姿で、ちょこちょこと葛城の後ろを歩く。
周りに勘違いされないかと不安な気持ちばかりだった。
葛城が言っていたことはきっと正しい。
私には、彼への恋心は全くない。

