さよならはまたあとで


体育館の片隅に備え付けられてある掃除用具箱から箒を取り出し、ファッションショー担当の実行委員に新しい原稿を渡した。

事情を説明すると、急なことなのにも関わらず、彼らは快諾してくれた。


「それでは、2年3組さんお願いしまーす!」


司会の男子生徒の通った声を合図に、私はレッドカーペットの上に立った。

七瀬に教わった歩き方で一歩一歩を慎重に踏み出していく。

ボロボロになったドレスを不思議そうに眺める観客たちを横目に、私は歩き続ける。


「はいはーい!!2年3組のテーマは「灰かぶり」でーす!!敢えて綺麗なドレスを纏う前のシンデレラを演出してみました!!」


元気の良い声が会場中にわんわんと響く。
渚は声量の加減を知らない。

私はそんな彼女の声に押されて、レッドカーペットの一番前のところに立つと、持っていた箒を片手に汗を拭うポーズをした。

これは七瀬の考案である。

熱気に包まれた体育館は、歓声で包まれた。


私はカメラに向かってポーズをとりながら律太を探した。

葛城は見つけたが律太がいない。

どこを探してもいない。

彼は背が高いから、人ごみの中でも目立つはずなのに…。

私は踵を返して、歩いて来た道を戻った。

その道すがらも、背中の向こうが気になって仕方がなかった。