彼は困りきった私から目線を外し、ぐるっと室内を見回した。
「あ、みーっけた」
彼がゆらゆらと歩み寄ったのは女子二人組。
先輩だった。
二人は顔を引きつらせて、「何言ってんのよ」と妙な笑みを浮かべる。
「はい、これ、」
彼はスマホの画面を二人に向ける。
すると二人の顔色はあからさまに悪くなった。
「…は、腹立つのよあの子」
不意に一人がきまり悪そうにそういった。
「暗いくせに、急に明るくなって…ずっと気になってた律太君とも仲良くしてて。泣くかなって思った意地悪も泣かないし、本当、ムカつく」
私はこれを聞いても何も感じなかった。
いや、何も感じなかったは言い過ぎか。
私の中は七瀬への申し訳なさばかり。
私のせいで、七瀬を悲しませた。それだけだ。
「あのねぇ、分かってないなぁ」
彼は眠たそうな声で続ける。
「優恵はねー、変わったんじゃあないの。本来の優恵に戻っただけなの」
「ねぇ〜っ」と彼は私にふわりと笑いかけると何事もなかったかのように控え室を出て行った。
私に集まっていた視線も散らばり始め、やがて私たち三人がその中に取り残された。
ドレスをズタボロにした二人を怒る気力もない。
「どうしよう…」
珍しく渚が弱々しい声をあげた。

