「嘘でしょ…?」
渚のいつもよりも静かな声に私は昨日の楽しかった思い出から引きずり出された。
ハンガーに掛けられたドレス。
それは、私が昨日着たものとはまるで別のものだった。
ハサミかなにかで引き裂かれた痕があちこちに残されていた。
「誰がこんなこと…」
私が呟くと、七瀬はがくりと膝を折った。
そしてすすり泣く声が聞こえてくる。
控え室がざわつき始めた。
私は足のすくむ思いだった。
ファッションショーに出れないから悲しいんじゃない。
七瀬が一生懸命作ってくれたドレスをズタボロにされたということに対して、七瀬への申し訳なさと、やった人に対しての怒りが私を支配していく。
「俺、見たよー。誰もいない控え室にハサミ持って入る人ー。」
張り詰めた空気の中、ゆるゆるとした口調でゆらゆらと現れた人物。
彼は私の方に向き直るとへらっと笑った。
「久しぶりだねぇ、ゆーえっ」
誰…!?
私は目をパチクリさせる。
彼は小動物のような、愛らしく、甘い顔の持ち主だった。
もちろん、この人に心当たりはない。

