その一方で、お母さんはすっかり律太のことを気に入った様子だった。
テキパキと食事の支度を手伝う律太をべた褒めしていた。
その途中、お母さんは私の耳元で「家庭的で素敵じゃない」と囁いた。
なんだかまるで、初めて彼氏を連れてきた娘を相手にしているかのような話しぶりだった。
あとできちんと訂正しないと、誤解が誤解を生んで大変なことになると私は察した。
三人でテーブルを囲む。
揚げたてのコロッケの香りが部屋中に漂っている。それは幸せの香りだった。
「いただきます!」
三人で手を合わせてから箸を手に取る。
学校での律太はどこにもいなかった。
きっとお母さんがいるから緊張しているのだろうけど、なんだか少し、距離を感じて寂しかった。
律太はコロッケを小さくして口に運ぶ。
それから、「美味しい」と言って笑みをこぼした。
「それはよかった」
お母さんも嬉しそうだ。
もちろん、そんな律太を見て私も幸せだった。
少し、この世界に愛着を持たせられただろうか。
最近流行りの芸人が出ているテレビ番組を見ながら、私たちは箸を進めた。
笑ってばかりだった。
食事が終わると、外はもう真っ暗だった。
雨も止んで、星がちらほらと瞬き始めていた。
「俺、そろそろ帰ります」
窓から外を眺めていた彼は、そう言って帰り支度を始めた。
「車で送ってあげるよ」
すかさずお母さんが気を利かす。
「いや、いいんです。お気遣い、ありがとうございます」
玄関までお母さんと律太を見送りに行った。
「またいつでも来てね!」
お母さんは名残惜しそうに律太に笑いかけた。
「はい、ごちそうさまでした」
律太が私の方を向いた。
目が合う。
「また明日」
律太は思わず顔をそらす私に手を振りながら出て行った。

