「どうしたの?」

「やっぱり、猫の話をしている遠山って、生き生きして表情が違うよな」

「だって、ブンジ大好きだもん」

「お前さ、笹山と松田にもそうやって話ししたらどうだ。なんか三人ギクシャクしてるみたいだけどさ」

「あっ、やっぱりそう見えてるんだ」

「まあ、女は男と違って複雑だろうけど、なんか勿体ないよな。笹山と松田っていい奴じゃないか」

「それはわかってるけど、だけど、私の何がダメなのかがわからないの。ちょっと色々あってさ」

 まさか本人を目の前にして、出渕先輩との駆け引きの事は言えない。

 苦笑いの私に近江君は呆れるように首を横に振った。

「あのさ、俺、別にあいつらから虐められてないから。それに、草壁からすでに一部始終聞いたから」

「えっ、嘘、どうして、草壁先輩が近江君に話すのよ」

「どうしてって言われても、草壁が遠山の事心配してさ、俺に話が来ただけ。でもさ、遠山って結構お節介だよな」

 お節介といわれて私はなんだかカチンと来た。

「だって、出渕先輩が直接私のところに来たし、断るの怖かったし、どうせやるんだったら、役に立ちたかったしっ!」

 なんだかヤケクソに言葉を投げつけてしまった。

「それで俺を助けようとしたってことか? 俺なんて遠山には関係ないのに」

「だって、いつも一人でいるしさ、そこに上級生が絡んできたら、私だって気の毒だって思うじゃない! それは、その、私が勝手にやったことだから、それは近江君には迷惑かもしれなかったけどさ、だけど、放っておけなかったの!」

 頬を膨らませながら、痛いところ突かれて逆切れする思いで言い返していた。

 近江君はそれを見て笑っていたが、眼差しが優しく見えた。

「そんなに不貞腐れるなよ。まあ、そうやって気にかけてくれたのは、俺は素直に嬉しいけどな。でもそのせいでこじれて、とばっちりのように遠山が自分の友達と孤立するのはよくないぜ」

「だけど、それは謝ったんだけど、謝っても許してくれないからさ、私、希莉が何を怒ってるのかがわからないんだもん。柚実は中立保ってるし、どうしていいかわからない」

「だったら事の顛末を正直に話して、気持ちをぶつければいいじゃないか」

「理由を話したところで、すでに解決できない感じ。私に原因があるみたいに怒ってる」

「女ってやっぱり複雑だな。きっと今更引っ込めない面子もあるんだろうけど、遠山にも明確な原因はあるだろうな」

「だからその原因って何よ!」

 つい突っかかってしまった後、近江君はじっと私の顔を見ていた。

 目を細め、するどい視線を突きつけてくるので、私は少し身を引いてしまった。

「な、何よ。なんでそんなにまじで見てるのよ」

「ほら、それだよ。それ」

「はっ?」

「遠山は俺には気持ちをぶつけてきてるじゃないか。そんな風に笹山と話し合ってみろよ。わからなければとことん訊けばいいじゃないか」

「だから、それが気軽にできないから……」

「なんで、できないんだ?」

「えっ、なんでって言われても……」

「ほら、それが原因だって」