「だって、お節介にも程があったし、希莉が嫌な思いしたのは私のせいだから」

「そう、それはわかった」

 やはり冷たかった。

「まだ、怒ってる?」

「怒ってるというよりも失望してるかな」

「失望? どういうこと」

 希莉はじっと私の顔を見ていた。

「私も、頑固な所があって悪いとは思ってる。でもね、千咲都は暖簾に腕押しだから、根本的な事がわかってないのが嫌なの」

「だったら教えてよ」

「それが、嫌なのよ。それって受身でしょ。まさにいつもの千咲都の悪い癖だから。今回は特に自分でも納得できなくてさ。このまま千咲都が気づいてくれなかったら、ずっと私はわだかまりをもったままになってしまう。それが嫌なの」

 一体どんなわだかまりをもってしまうのだろう。

 普通謝ったら、それなりに軟化して心開いて許すものじゃないのだろうか。

 私はこれほどまで希莉の事を気遣って、希莉に嫌なことなどしてこなかったのに。

 その時、希莉は少し拗ねた表情になり、私も戸惑って硬く強張っていたと思う。

 それ以上話す事がなく、私は適当な理由をつけて希莉から離れた。

 自分の席に戻り、次の授業の教科書を準備しだした。

 希莉も柚実も一人で席についてポツンとしている。そして私もまた、一人ポツンと席についていた。

 元祖一人ポツンの近江君もいたので、ポツンポツンと孤島が増えたような奇妙な光景だった。