その時、希莉と柚実が一緒に教室に入って来た。

 私の周りに人だかりができてるのを見て、あっさりと敬遠されてしまった。

 私が席から立ち上がろうとした時、相田さんが突然手を握ってきた。

「ちょっと握手させて。草壁先輩と一緒に並んで話した人なんて、すごく尊敬する。ねぇねぇ、今度一緒に帰る時は私も呼んで。お願い」

「えっ?」

 相田さんのパワーというのかノリというのか、これは引いてしまった。

 この人ちょっとどこかおかしいんじゃないだろうか。

 周りの人も、それに合わせるように「私も、私も」とお遊びのように連呼した。

 この人達はこの人達で、学校にアイドルを作って勝手に妄想してはキャーキャー騒ぐのが楽しいのだろう。

 だけど、ここまで崇められるとあまり悪い気はしなかった。

 一層のこと、この人達のグループに入って残りをすごそうかと揺れ動いてしまう。

 この人達と付き合ってるうちにチャイムが鳴り、担任が教室に来てしまった。

 そして希莉と柚実に挨拶する機会を完全に失ってしまった。

 これでは益々、気まずくなっては希莉に近づきにくかった。

 一時間目は二人と接触がないままに始まり、そして終わった時が私は非常に戸惑った。

 このまま無視する訳にも行かないので、自ら立ち上がり、とにかく柚実の席に行った。

「おはよう、柚実。あのさ……」

「もし希莉の事だったら、私は関係ないからね」

 まだ話しはじめたばかりだというのに、話も終わらないうちからつっぱねられ、相変わらず冷たい。

 柚実と喧嘩している訳でもないのに、いきなり釘をさされてしまった。

 普通なら、仲を取り持ったり、仲直りさせようとか思ってもよさそうなのに。

 私の考えが読めたのか、柚実は表情を硬くした。

「私も意地悪でやってるんじゃないの。どっちかの肩を持つのはフェアじゃないと思うだけ。希莉の前でも全く同じだからね」

 首尾一貫して、柚実は中立を保ちたいようだった。

 これが彼女のやり方だとしても、どこか私は引っかかるものがあって、とても寂しく感じてしまった。