目が合うと、期待を込めて瞳孔を真ん丸く大きくして私をじっと見つめだした。

 次に前足を私の膝まで持たせかけて二本足で立ち上がって催促する。

 ここまでされると無視できず、おかずを差し出せば、ブンジは喜びいさんでそれを口にした。

「姉ちゃん、人間の食べるものはブンジに与えるなよ。体に悪いんだから」

「少しぐらい大丈夫だって。それに無視できないくらいかわいいんだもん。ねぇ、ブンちゃん」

 八つ当たった罪滅ぼしも入っていた。

 ブンジがおかわりを欲しそうにしている姿がたまらなくかわいくて、私はどうしても放っておけなくなり、またあげてしまった。

「そういえばなんだかブンジは痩せたみたいだな」

 読み終わった新聞紙を閉じながら、父が言った。

「今まで太り気味だったから丁度いいんじゃないの」

 私がそれに答えた。

 自分の話題が食卓でされてることも知らずに、ブンジはまだ餌がもらえないか、私の顔をじっと見ていた。

 私だけを頼るブンジがかわいい。

 私とブンジの間には信頼感があるように思う。

 ブンジは犬のような性格と近江君にも紹介したけど、まさに今そんな感じだった。

 ブンジの事を気にかけてくれる近江君にも、この姿を見せてあげたいとふと思った。

 実物のブンジを見せたら喜ぶかもしれない。

 なんだか近江君にブンジを無性に見せたくなってくる。

 学校に連れて行くことはできないけど、私はスマホでブンジの写真を撮って、それを近江君に見せることを思いついた。

 そう考えると、少しは楽しみができて希望が持てるようだった。

 近江君なら構ってくれそうな期待もあった。

 猫好きの近江君。

 クラスではいつも一人。

 だけど私には声を掛けてくる。

 本当に不思議な奴。

 足元でかしこまるブンジの頭を撫ぜながら、私は近江君の事を考えていた。