知られても詳しく追求されれば困ってしまうし、もし気付いて聞かれたとしても、やっぱり『別に』の一言で済ましてしまうことだろう。

 結局放って欲しいのか、構って欲しいのか自分でもよくわからない。

 私は父と母を上目遣いに、お味噌汁をすすりながら何気に見ていた。

 ご飯中も新聞を読んでる父に対してどこか不満げになっている母は、諦め気味にご飯をよそったお茶碗を差し出した。

 父もせめて受け取る時くらい、母の顔を見ろよといいたくなるくらい、機械的にそれを受け取っていた。

 でも、父の読んでる新聞は英語だから、そんなのが理解できる方がすごいし、食事中は読むななんて偉そうなことは私には言えない。

 それもビジネスの一環とわかってるからだ。

 時間に追われる毎日だから、食事中も無駄にはできない。

 逆に良くやってくれてると感謝するくらいかもしれない。

 母親もそれが分かってるから、文句も言わず無理して放っておいているだけなのだ。

 きっと私に対しても本当は何か言いたくてもわざとはぐらかしてるだけなのかもしれない。

 父を見ても、やはり目の動きが機敏だった。

 速読するくらいの速さで父も英字新聞の内容を頭に入れようと必死なんだろう。

 まさに時間に追われてご飯を食べているその姿は、なんだか気の毒に感じてきてしまった。

 忙しそう──

 そういえば近江君も時間がないと言っていた。

 一体何をしてそんなに忙しいのだろうか。

 こんな時に近江君の事を考えても仕方がないと、私は気を取り直し、目の前のおかずをお箸でつつく。

 足元から小さく「ミー」という声が聞こえた。

 ブンジがかしこまって座り、首を上に向けて私の様子を伺っていた。