あまりにも住むべき場所が違うと、知り合っても重荷になってしまう。

 しかし、一人になって振り返れば、後から恥かしさがじわじわとこみ上げてきた。

 こうなると、体全体がむず痒くなり、のた打ち回りそうなのを必死に耐えて、電車のつり革の握る手に力が入った。

 話そうと無理をしていた事もあるけど、調子に乗ってベラベラと自分の悩みを話してしまったことがこの時になって悔やまれる。

 自分は一体何をしてたのか、こんがらかって全てを上手く整理できないでいた。

 波乱万丈な高校生活。

 こんなはずじゃなかったのに──。

 やっとの思いで家に帰れば、ブンジが玄関で「ニャー」とお出迎えしてくれた。

「あっ、ブンジ」

 ブンジには記憶力がないのか、それとも懐が大きいのか、昨晩八つ当たりしたことを微塵とも感じさせずに接してくれている。

「ブンジ、昨日はごめんね」

 頭を撫ぜてやるといつものようにゴロゴロと喉を鳴らして目を細めていた。

 私も力尽きていたこともあり、疲れた足取りで自分の部屋に向かい、ブンジの事をそれ以上構ってあげられなかった。

 自分の事で精一杯。

 ブンジも空気を読んだように、じっと座ったまま目で私を追っていたけど、その後はお気に入りの場所へと行ってしまった。

 自分の部屋に入ると、カバンを放り投げ、ベッドに横たわる。

 じっと天井を見つめ、とりとめもなくこの日の出来事を振り返る。

 ──希莉。

 このまま仲が戻らなかったら私は残りの高校一年生をどうやって過ごせばいいのだろう。

 近江君を見習い、私も本を読むなりして休み時間を過ごそうか。

 近江君が先にそうしてくれてるから、そういうのが教室にもう一人増えたところで、あまり不自然に思われないかもしれない。

 でも近江君は好き好んでそうやってるし、私は仕方がないからそうなってしまったとでは意味が違ってくる。

 正真正銘のぼっちではないか。

 こんなことならもっと幅広く知り合いを作って、どこにでも所属できるようにしとけばよかった。

 それを希莉や柚実と一緒に居ることが最高のように思い、ずっとそれにしがみついて結局は失速してしまった。

 草壁先輩は全てを話した方がいいようなことを言っていたが、近江君の虐めの問題を話したところで、私がお節介をなことをバカにしないだろうか。

 希莉はそういうことを持ち出して冷やかしてくるから、それも嫌だ。

 しかしその前に、そんな事で自分を利用しようとしてたと思われて余計に怒ったらどうしよう。

 そっちの方向もありえる。

 希莉ってなんだか気難しい。