手紙が係わってこなければ、草壁先輩とも会う事はなかったし、更に肩を並べて一緒に歩く事もなかった。

 その手紙も近江君のピンチを助けるために受け取ったことだが、近江君と草壁先輩も繋がりがあった。

 近江君と知り合った事が全ての起因となって思いもよらない方向へ流れていく。

 草壁先輩が身近にいて、私に話しかける今、どうしてこうなった? と、地に足がつかずにソワソワしてしまった。

 意味もなくチラリチラリと草壁先輩の横顔を見てしまう。

 目が合えば、その都度ドキッとしてヘラヘラする。

 草壁先輩はかっこいいし、そんな人に親しくされれば、少しだけ優越感も現われるが、この状況が自分には合ってないというのもヒシヒシと感じるから、無理をしてしているのが苦しい。

 でもこのドキドキが癖になりそうでもあり、訳がわからないと目が回りそうだった。

 駅に辿り着いてホームが違うと知った時、やっと開放されて落ち着いた。

 頭を深く下げて、さよならをすれば草壁先輩は「またね」と手を振ってくれた。

 一度声を交わして知り合ってしまったその後、再び草壁先輩と出会うことが怖く感じてしまった。

 できることなら一期一会でお願いします。