「千咲都ちゃん困ってるぞ。どうしても相手が受け取らなくて、これを引き受けたことを責められたそうだ。お前のせいで千咲都ちゃん窮地においつめられたんだぞ。こいうものは自分で渡せよ」

「だってさ、俺が話しかけようとしても向こうが恥かしがってすぐ姿隠すし、連絡のとりようがないから、仕方なく俺のメールアドレスと電話番号を手紙で渡そうと……」

「おい、それって避けられてるのがわからないのか。お前、都合よく受け取りすぎ。なんでも相手は彼氏がいるんだってさ。諦めな」

「えっ、そうなの。だったら俺は思わせぶりをさせられてたの? なんだよそれ」

「だから違うって。お前はいつもずれてるんだよな。向こうは逃げてたんだよ。どうしてそれに気がつかないんだよ」

「だって、俺困ってるところ助けたんだぜ。お礼も何度も言われたし、すごく感謝されたのに。普通こういう場合、その後惚れられるのが筋ってもんじゃないか」

「バカも休み休み言え。お前はやっぱり根本的に間違ってる」

 草壁先輩は手紙を出渕先輩につきつけた。

「あっ、なんでこれこんなに汚れてるんだよ」

「ご、ごめんなさい。それは私が誤って汚してしまったんです。全ては私が悪いんです」

 思いっきり頭を下げていた。

 その時ずっと我慢してきたものが一度に噴出して、涙が溢れ出した。