希莉が教室から出て行くのを見届けた柚実は、難しい顔をして私の方へやってくるなり、大きく溜息を吐いた。

 次に、希莉との亀裂の修復が不可能なことを知らせるように、大胆に首を横に何度も振った。

「なんだか板ばさみになって、私はやりにくいよ」

「迷惑かけてごめん」

 とりあえず謝っておいた。

「だから、それがダメだって。千咲都は何かあると自分が悪くなくてもすぐに謝るのが癖で、物事の本質を全然見ずに、表面的だけで済ませすぎ。それって、当事者から見ると本当にイライラするんだよ」

「だけど、どうしたらいいの。手紙を預かってきたことは本当に私が悪いし、そのせいで希莉は許してくれないし、柚実にだって迷惑かけてるのは事実じゃない」

「うーん、なんていったらいいんだろう。希莉は手紙の事を怒ってるんじゃないんだと思う」

「えっ? だったら何を怒ってるの?」

「それは千咲都が自分で気がつかないといけないと思う。ここで私がとやかく言えば、希莉は益々腹を立てるし、希莉にとったら千咲都が気がついてくれないと、この先もずっとこのままで元の関係には戻れないんじゃないかな」

「柚実の言ってることがわかんないよ」

「私だって希莉本人じゃないから、自分が思ってることが正しいかわかってない。これは千咲都と希莉の問題だから、私は口出しできない」

 かっこいいと思っていたクールの意味だが、この時突き放す柚実がとても冷たく感じた。