「笹山となんかあったんだろ」

「あっ、そ、それは」

 やはり見られていた。

「俺がとやかくいうことじゃないけども、遠山は笹山の家来みたいだぞ」

 やっぱり自分に合ってないと言いたいんだろう。

 私は惨めな気持ちになりながら、うつむいてしまった。

「だけど、お前の気持ちもわからないでもないけどな。時には無理をしたくもなるだろうし、調子に乗るときもある。実は俺もそうだった」

「えっ?」

 近江君は何が言いたいのだろうか。

 このまま言われるばかりも癪だったので私も質問してみた。

「近江君はどうしていつも一人でいるの?」

「ん? いつも一人? まあ、あの状態ではそう見られてもしかたないな」

「もしかしてクラスで虐められてるの?」

「いつも虐めに繋げてくれるけど、そんな事はない。話せば皆気さくに相手してくれるぜ。遠山だって、ほら、今俺と話してるし」

「あっ、そ、そうだけど。だけど私にはいつも一人に見える」

「俺は気にしてないけどな。それよりもやらなくっちゃ行けない事が一杯あって、自分中心なだけだ」

「友達を作らないで寂しくないの?」

「友達ならいるぜ。ほら、やっぱり上辺だけで判断しすぎてる。まあいいけどな。俺も色々隠したいこともあるし。俺の事を心配するよりも、まずは自分の事心配しろ。殻に閉じこもりすぎると、よけいに周りが怖くなっちまって、表面的にしか物事が見られないぜ」

「別に近江君の事を心配してる訳じゃないけど……」

 といいかけたとき、この問題の一番の原因は近江君が関係していた。

 自分が勝手に近江君を助けようとして、こんな事になってしまった。

 それなのに、今私は近江君に説教され、ことごとく全てが空回りしている。

 自分でも何をしてるのかわからなかった。

 近江君は時折本棚から本を選んでいたが、結局本を借りることはなかった。

 私と話したいがためにここに来たのだろうか。

 とにかく近江君は私の事を気にかけてくれていたのだと思う。

 だけど、却って見透かされていているのが恥かしい。

「そろそろ教室に戻らないとな」

 私達はまた一緒に自分のクラスへ戻っていく。

 二人肩を並べて廊下を歩くのは変な気分だった。

「なあ、ブンジってどんな猫だ?」

 突然に投げかけられた質問。でもブンジの事を聞かれるのはなんだか嬉しい。