希莉に鬱陶しいといわれた朝の始まりは、心の枷(かせ)となり私をずっと苦しめた。

 まだ一時間目の授業の最中は根本的な問題に気がつかず、一人悶々としているだけでよかったが、一時間目が終わった直後の休み時間、自分が窮地に深く落ちていたことにびっくりした。

 授業が終わって二人とどう接して良いか逡巡し、成り行きに任せていたら、私は一人ぼっちになっていたのだった。

 いつも側にいた二人が、この時どちらも私を避けた。

 もしかしたら、少しの間をおけば、お互い水に流してまた元にもどれるかもと安易に期待していた自分だったが、甘かった。

 私が恥じも外聞もなく、希莉に近づいてしつこく食い下がれば事態はまた違ったのかもしれないが、いちどタイミングを逃すとその後は気まずさがどんどん膨れ上がり、しまいに近づくのが怖いほど臆病になって動けなくなってしまった。

 この後始末の悪さがこじれていくのが目に見える。

 ぎこちなく行動範囲が狭まって、不協和音を奏でてしまう。

 希莉に一方的に責められて、私は言い合いもしてないというのに、あっと言う間に仲たがいになってしまった。

 柚実はやりにくそうに、私と希莉を交互に見てるが、溜息を漏らすだけで口は出さなかった。

 結局休み時間はすぐに終わり、二時間目が始まるが、その後もずっと同じ状態だった。

 柚実はどちらにも肩入れすることがなかったので、一方的にどちらかに着くということをしないが、とてもやりにくそうで、一定の距離をとって私達二人の様子を見ていた。