ふと顔を上げたとき、近江君が私を見ていたことに気がついた。

 目が合ったときお互いそらしたが、希莉と揉めてたところを見られていたのだろうか。そうだったらとても嫌だ。

 近江君は一体何を思っただろうか。

 やっぱり私が無理をしているって呆れてただろうか。

 無理──。

 でも私にとっては努力でもあった。

 それをいい様に捉えてくれてもいいじゃないの。

 それが鬱陶しいやら、気に入らないで理不尽に否定されるのも一方的で不公平だ。

 私の事、もっと理解してくれたっていいのに。

 少なくとも私はいつだって我慢してきたのに。

 私は汚れた手紙に向かって小さく『バカ』と罵った。

 だけど事態はこれだけで終わらせてくれなかった。

 転がした小さな雪の塊は急な斜面から転がり落ちていき、そしてそれが段々と大きくなっていく。

 まさに今私はその坂道を転げる雪の塊のうえで玉乗りをしている状態だった。