希莉の感情はすぐには収まることなく、不機嫌さが露骨に顔に出ていた。

 その態度に、ふと不公平さを感じてしまった。

 こんな事を持ち出した私が一番悪いと思っている。

 でも今まで希莉の言うことを聞いてはそれに従っていたのに、希莉にも冗談と済ますにはギリギリのような言動にも怒らず受け流してきた。

 もちろん我慢することだって多々あった。

 それなのに自分の時は、なぜこんなにも責められるのだろう。

 少しぐらい私の事を大目にみてくれてもいいのに。

 そんな気持ちを抱いてもやっぱり口にはできず、希莉のイライラした態度にやっぱり屈服してしまう。

「だって、希莉が怒ってるんだもん。謝るしかないじゃない」

「千咲都は謝るばかりで、こういうとき鬱陶しいよ」

 鬱陶しい──。

 とてもショックだった。

 自分の非を認めて謝っているのに、謝るだけで鬱陶しいなんて言われるなんて思わなかった。

 私は下を向いて黙りこくってしまった。

 それを見かねて柚実が間に入る。

「千咲都が一方的に悪い訳でもないんだよ。こういうことになった経緯が私達わからないから、つい責めちゃったけど、千咲都も黙ってないで、自分の言いたい事を言った方がいいよ。千咲都は人を尊重しすぎて我慢する所があるでしょ。そういう部分が希莉をイライラさせてるんだと思う」

 柚実は助け舟をだしたつもりだろうが、私が良かれと思ってやってきたことを全く否定する意見だった。

 好かれると思ってやってたことがイライラさせている?

 そんな事思いもよらなかった。

 その時、チャイムが鳴り、それを合図に希莉も柚実もぎこちなく自分の席についていく。

 私の机の上には汚れた手紙がポツンと置き去りにされ、私もまた一人孤島に居るような気分で座っていた。