これには柚実もびっくりして一緒に叫んでいた

「ちょっと、猫が吐いたって…… それは仕方がないとしても、なんでそんなに簡単にそんな事引き受けちゃうのよ。それで差出人は誰?」

 机の上に置いた手紙を、とても汚さそうに指先でつまんで裏を向けた。

 そこには出渕祥真と差出人の名前が書かれていた。

 それを見て、希莉は露骨に嫌な顔をした。

「この人、ゴリラみたいな人でしょ。知ってる。駅でさ、他の学校の男子生徒からナンパされて断ってもしつこくてさ、それで困ってたら同じ制服だったからこ の人が助けてくれたんだ。それがあるから邪険にはできなくて、会えば挨拶はしてたんだけど、それがなんか勘違いされたみたいでそれからは避けてたんだ」

「助けた事で惚れられたと勘違いしたケースね」

 ここで柚実がボソッと言った。

 希莉はため息をついて、私の顔を見つめた。

「悪いけど、返してきて」

 やっぱり思った通りの結果だった。

「でも、それなら希莉がこれを受け取ってはっきりと言えばどうかな」

「ちょっと待ってよ。千咲都が勝手に預かってきたんでしょ。責任は千咲都じゃないの? しかも汚れてるんだよ、この手紙。私がこのまま返したら、私が汚して返したって事になって、逆恨みされてストーカにでもなったらどうすんのよ」

 もちろん希莉の言うことは一理あった。

 でも私もここまで来たら後には引けない。