「何、その汚い手紙」

 染みが目立つその手紙の破壊力は半端じゃなかった。

 目の前に差し出された手紙と私を交互に見て、希莉は訝しげに眉根を寄せた。

「あのさ」

 何から説明すればいいのだろう。

 私は言葉に詰まり、恐る恐る上目使いに希莉を見つめる。

「どうしたのよ。それ一体何なの?」
 
 希莉の心証はすでによくない。

 しかし後にも引けない。

「実は……」

 悪い事をして母親を恐れる子供のように、私は身を縮こませ腹を括り、あとは一気に話し込む。

「昨日、放課後に二年の上級生からこれを希莉に渡して欲しいって頼まれてさ」

「えっ? 二年生から? どうして千咲都に?」

「それが、たまたま二年生に会って希莉の事聞かれて、それで偶然希莉の友達だったから……」

 近江君の虐めの問題は飛ばして、何とか伝えようとしどろもどろになってしまった。

「それで、言付かったってこと? こんな汚い手紙を?」

「あっ、それが、この汚れは私が悪いの。その、昨晩うちの猫がアクシデントでこの手紙の上に吐いちゃって……」

「えー!!」