話を上手くもっていけるかもしれない。

「だったらさ、ヤキモチ焼かせるためにもちょっと浮気するフリでもしてみたらどうかな」

 ここで希莉が笑って「そうだね」と言ってくれたら、私の手紙も渡し易くなるんだけど、希莉お願い、そう言って。

 私の願いが通じたように、希莉は笑ってくれた。

「ちょっとお仕置きするみたいにヤキモチ妬かせるってこと?」

「うん、そうそう」

 これは上手くいくかも。

「彼は割りと大人だから、私がそんな事できないってわかってると思う。だから『やれるものならやってみろ』って言われちゃったんだ」

 まだこの時、希莉は笑っていた。

 これはもしかしてあの手紙を渡せる最高のタイミングかもしれない。

 雨雲から晴れ間が覗くような希望を見い出し、私はこのノリに合わせてとうとう切り出してしまった。

「実はさ、希莉にお願いがあるんだ」

「どうしたの急に?」

 私はカバンから例の手紙を出した。

 希莉の前にそれを出すと、訝しげな表情でそれを見つめた。

 柚実も、何も言わずに何が始まるのかをじっと見ていた。