それにしても、今日という日になんというバッドタイミングだろう。

 希莉は私達が居る事も忘れて、忙しく指を動かし返事を書いていた。

 それを送ってから、やっと私達と向き合った。

「ごめんごめん、私情を挟んじゃって。いつものことなんだ。彼ちょっと忙しくてさ、今度のデートもキャンセルされて、それで昨晩電話で文句言って言い合いになっちゃった。それで浮気しちゃうから、なんて口走ってしまったら、売り言葉に買い言葉でさ、やれるもんならやってみろよとか言うから、益々腹が立っちゃってさ。どっちも後に引けなくて、今朝はメールでお互いの様子の探りあいって感じなの」

 私には実感が湧かない話だった。

「本当はどっちも好きなのに、好き過ぎて甘えて言いたい放題って感じだね。結局はのろけだわ。ごちそうさま」

 柚実はさらっとコメントしていた。

 希莉も痛いところ突かれたのか照れるように笑顔を見せていた。

 喧嘩したといっても、それも楽しい出来事みたいに私には思えた。

 こういう話題も私は苦手だ。

 自分には程遠く、上手く話しに乗れずに少しもやもやしてしまう。

 羨ましいやっかみもあるのかもしれない。

 それでも無理して話に入ろうと試みる。

「早く仲良くできるといいね」

 当たり障りなく、無難な受け答え。

 他人事だから簡単に口先から出る言葉だった。

「だけどこのまま仲直りするのも癪だな。結局は彼に振り回されてるだけって気がして」

 その時私は閃いた。